会社設立時の資本金はいくらにすべき?融資・許認可まで考えた決め方
はじめまして、行政書士いのうえ法務事務所の井上と申します。私は岩手県盛岡市で中小企業専門の行政書士事務所を経営しており、会社設立のご相談時によく聞かれるのが「資本金はいくらにすればいいですか?」という質問です。
資本金1円からでも会社設立できることは多くの方がご存知かと思いますが、「1円で設立できる」ことと「1円で設立するのが適切かどうか」は全く別の話です。
資本金は事業開始後の資金繰り・融資・許認可まで逆算して決める必要があります。
この記事では、盛岡市で起業や会社設立を考えている方に向けて、資本金の具体的な考え方について解説します。
1.会社設立時の資本金は「必要資金・融資・許認可」の3点から決める
結論から申し上げますと、会社設立時の資本金に「この金額なら正解」という数字はありません。私がご相談を受ける際は、主に次の3点を確認します。
開業から売上入金までに、いくら必要なのか
創業融資を利用するのか
資金要件のある建設業や運送業の許認可は取得するか
たとえばパソコンと自宅事務所だけで始められる事業と、トラックを購入して始める運送会社では必要な資金が全く違います。
そのため「キリがいいから100万円」と決めるのではなく、自社の事業計画から逆算することが基本です。
2.会社設立は資本金1円でもできるが、実務ではおすすめしない
会社法では最低資本金制度が廃止されているため、資本金1円でも株式会社を設立できます。では、なぜ1円での設立はおすすめできないのでしょうか。
大きな理由の一つは、会社設立後にすぐに支払いが発生するからです。
事務所の賃料、備品、広告費、仕入代金など、事業によって必要なものは異なりますが、売上が入金される前に支払わなければならない費用は少なくありません。
開業当初は売上が想定を下回ることも多い一方で、会社としての信用がなく仕入は現金決済となることもあります。
1円で設立すると一瞬で資金ショートすることもあります。
資本金の決め方① まず「会社設立後に必要なお金」を計算する
私が資本金を考えるうえで重視したいのは、資本金の相場よりも資金繰りです。まず、開業に必要なお金を書き出します。
たとえば、事務所の敷金・賃料、車両・機械、パソコン、工具、広告宣伝費、仕入代金などです。従業員を雇うなら、給与や社会保険料などの支払いも考えなければなりません。
さらに忘れてはいけないのが、「売上が発生する時期」と「実際に入金される時期」は同じとは限らないことです。
建設業などでは、仕事を受注してから代金を回収するまでに期間が空くことがあります。その間にも給与、外注費、材料費、燃料代などの支払いは発生します。
したがって、
初期投資+売上入金までの運転資金+予備資金
という考え方で必要資金を見積もり、そのうち自己資金でいくら用意し、融資でいくら調達するのかを考えるのが実務的です。
資本金の決め方② 創業融資を想定する
創業融資の代表格として、日本政策金融公庫の「新規開業・スタートアップ支援資金」があります。
過去には創業資金総額の10%を自己資金として用意しなければ申し込めません(※いわゆる10%要件)でしたが、現在その要件は撤廃されています。
ただし、ここで「資本金1万で会社を設立して必要なお金は全部創業融資を申し込もう」と考えるのは危険です。
資本金1万円の会社の融資はまず通らないと考えてよいでしょう。
10%要件は表向きでは撤廃されていますが、金融機関の職員は当然に自己資金の額を見ます。
個人の口座に預金が豊富にあれば別ですが、そうでない場合、資本金1万円で設立すると計画性のない創業として警戒されます。
本当に本当に創業することが夢であれば、事前に必要なお金を計算し、数年にわたって貯金をすることも可能です。
10%要件がないとは言え創業融資を狙うのであれば、最低でも10~30%は資本金を含めた自己資金として確保することがスタートラインと言えます。
資本金の決め方③ 建設業許可を取るなら「500万円」
許認可の中には資金要件のあるものがあり、代表的なものが建設業許可です。許認可を取得されない方は読み飛ばしていただいて大丈夫です。
一般建設業許可の財産的基礎要件は、
自己資本が500万円以上ある
500万円以上の資金調達能力がある
のいずれかです(新規許可の場合)。
ここで非常に多い誤解が、「建設業許可を取るなら資本金を500万円にしなければならない」というものです。
決算を1期も迎えていない状態で資本金を500万円にすればそれで条件は満たされますが、500万円でなくとも融資を受けるなどして預金残高を500万円以上にすればそれでも満たされます。
建設業許可に限った話ではなく、何の許可を、いつ取得するのかまで考えて資本金を決める必要があります。
3.まとめ|資本金は「会社を作るため」ではなく「会社を続けるため」に決める
これまでご説明してきた通り、会社設立時の資本金は1円でも可能ですが、実際に事業を始めるのであれば不適切です。
これは1円だから不適切なのではなく、1万円であっても不適切な場合もあります。実際に資本金数万円で会社設立したものの、創業融資を受けられず困ってしまった方からの相談を受けたことがあります。
資本金を決めるときは
①事業開始に必要な資金
②創業融資
③許認可の資金要件
この順番が基本です。
行政書士いのうえ法務事務所では、単に「会社を作るための定款を作成する」という考え方ではなく、その後の事業開始まで見据えて会社設立を支援しています。
私は地方銀行で融資業務を経験し、現在は行政書士として、建設業・貨物自動車運送事業・産業廃棄物収集運搬業などの許認可と、創業融資をはじめとした資金調達支援を行っています。
そのため許認可取得と資金調達、その先の事業開始から逆算して整理することができます。
会社設立は、登記が完了した日がゴールではありません。事業を始め、売上を作り、資金を回して会社を続けていくためのスタートです。
盛岡・岩手でこれから法人を立ち上げる方で、「自分の場合、資本金をいくらにするのが適切なのか」と迷っている場合は、事業内容や必要な許認可、創業融資の予定まで含めてご相談ください。
会社を設立してから資金計画を考えるのではなく、設立前だからこそできる会社設計を一緒に考えていきます。
4.よくある質問
Q. 資本金1円でも銀行口座は作れますか?
資本金が少ないことだけで法人口座を開設できないと一律に決まっているわけではありません。ただし、金融機関では会社の事業内容や所在地、代表者、取引目的などから総合的に判断します。資本金1円の会社を作るのであれば、「なぜ1円なのか」を含め、事業の実態を説明できるようにしておいた方がよいでしょう。
Q. 資本金が多いほど創業融資には有利ですか?
資本金だけで融資の可否が決まるわけではありませんが、有利に働くのは事実です。ただしあまりにも資金が潤沢すぎると、それはそれで融資を受ける必要がないと判断されることもあります。
Q. あとから資本金を増やすことはできますか?
はい、もちろんできます。任意のタイミングでできますが、登記の際には登録免許税が必要となります。経営していく中で資金がどうしても足りなくなったときや資本の増強を図りたいときは良いですが、創業時の見込みが甘く創業してすぐ増資が必要となるようなケースは避けましょう。
Q. 会社設立を行政書士いのうえ法務事務所に依頼するといくらかかりますか?
当事務所の報酬やサポート内容については下記ページをご参照ください。行政書士いのうえ法務事務所の会社設立サービスについてはこちら>>>
この記事を書いた人

井上知紀
行政書士・許認可×資金調達プロデューサー
運行管理者資格 所有
地方銀行での融資・法人営業経験を活かし、許認可と資金調達の両面から中小企業を支援。財務要件のある運送業・建設業・産廃業廃棄物収集運搬業許可を得意としている。
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