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経審における総合評定値(P点)とは

執筆者の写真: 行政書士 井上 知紀
行政書士 井上 知紀
2024年10月2日
読了時間: 8分

更新日:9月26日

 入札参加資格を得るために必要な経営事項審査。入札参加者名簿に登録されている方は毎年受けていらっしゃるかと思います。経営事項審査結果通知書に最終的な評点である総合評定値が記載されていますが、そもそもどのような構成になっているかご存知でしょうか?経審の点数を上げより大きい工事を受注するためには、まずその構成を理解することが大切です。こちらの記事では経営事項審査における総合評定値について、岩手県盛岡市にある建設業専門の行政書士井上が解説します。


【目次】


1.総合評定値とは

 総合評定値(P点)とは、経営事項審査において、建設業者の経営規模、経営状況、技術力、社会性などを総合的に数値化したものです。経営事項審査では大きく分けて次の5つの評点から算出されます。


項目

内容

ウエイト

X1

完成工事高

25%

X2

自己資本額と利払前税引前償却前利益の額

15%

Y

経営状況分析の結果

20%

Z

技術職員数と元請完成工事高

25%

W

その他社会性項目

15%


上記のように「ウエイト」があり、たただ単純に全て足すわけではありません。各項目の点数に対しウエイトを掛け、全て足したものが総合評定値(P点)です。数式で表すと下記のようになります。


P点="X1"×0.25+"X2"×0.15+"Y"×0.20+"Z"×0.25+"W"×0.15


ウエイトに差があるため、特にウエイトの大きい項目の対策をするとP点が大きく伸びることが分かりますね。では、対策の優先順位は掛け目の大きい順で良いのでしょうか。


建築一式、とび土工、解体の許可を有するA社を事例に、下記図をご参照ください。


経営事項審査におけるP点の構成

X1とZは許可業種ごとの数値が反映されるため、点数を伸ばすためには各許可業種の完成工事高や技術職員数を増やす必要があります。


一方、X2、Y、Wは全ての許可業種にまたがっており、対策をすると全許可業種の評価点を伸ばすことができるとお分かりいただけるかと思います。


そのため、どの項目を優先的に対策するかは事業所の戦略次第であると言えます。


以下では詳しく各項目について見ていきます。



2.X1(完成工事高)

 X1は経営規模を図る指標で、審査項目は「完成工事高」です。後ほど「元請完成工事高」という指標がでてきますが、X1における工事高は元請完成工事高と下請完成工事高を足したものになります。


完成工事高=元請完成工事高+下請完成工事高


そのためこの項目は元請けか下請けかに関わらず、工事を多く請け負うことで点数を伸ばすことができます。


またこの際、「振替(積上げ)」という制度を利用することができ、一定の許可業種についてはその完成高を他の許可業種の完成工事高として扱うことができます。下記をご覧ください。


◼︎一式工事に振替できるもの

工事名

含めることができる専門工事

土木一式工事

とび・土工・コンクリート工事


石工事


舗装工事


しゅんせつ工事


水道施設工事


鋼構造物工事(※1)


解体工事(※1)

建築一式工事

大工工事


左官工事


屋根工事


タイル・れんが・ブロック工事


板金工事


ガラス工事


防水工事


内装仕上工事


熱絶縁工事


建具工事


電気工事(※2)


管工事(※2)


鋼構造物工事(※2)


鉄筋工事(※2)


塗装工事(※2)


解体工事(※2)

※1 土木関係工事限る

※2 建築関係工事限る


◼︎専門工事に振替できるもの

工事名

含めることができる専門工事

とび・土工・コンクリート工事

石工事


タイル・れんが・ブロック工事


解体工事

石工事

とび・土工・コンクリート工事

屋根工事

板金工事

電気工事

電気通信工事


消防施設工事

管工事

熱絶縁工事


水道施設工事


消防施設工事

タイル・れんが・ブロック工事

とび・土工・コンクリート工事

鋼構造物工事

鉄筋工事

板金工事

屋根工事

ガラス工事

建具工事

内装仕上工事

建具工事

熱絶縁工事

管工事

電気通信工事

電気工事

建具工事

板金工事


ガラス工事

水道施設工事

管工事

消防施設工事

電気工事


管工事

振替すると振替元の工事種別では経審を受けられなくなりますので注意が必要です。そのため、自社で「どの業種のどのくらいの金額の工事を請け負いたいか」を明確にし、振替を行うのか行わないのか、戦略的に取り組むことが有効と言えます。



3.X2(自己資本と利益額)

 X2は経営規模を図る指標で、審査項目は「自己資本額」と「利払前税引前償却前利益の額」です。この項目は経営規模の大きな会社に有利に働く傾向が強く、中小企業が行える対策には限りがあります。


そのため対策については記載しませんが、重要な点としては1年間の実績で計算されるのではなく、2年または3年平均での計算される点です。


2年平均にするか3年平均にするかは自社で選択することができ、どちらか有利な方を選択しましょう。



4.Y(経営状況分析の結果)

 Yは経営状況を図る指標で、審査項目は「経営状況分析の結果」です。Y点自体も8つの指標に基づいて計算されており、8つの指標とは下記の通りです。


  • 純支払利息比率

  • 負債回転期間

  • 総資本売上純利益率

  • 売上高経常利益率

  • 自己資本対固定資産比率

  • 自己資本比率

  • 営業キャッシュフロー

  • 利益剰余金


経営状況分析の8指標

この8つの指標も指標ごとに係数があり、Y点全体に与える影響力の大きさから優先的に取り組みたいものは「純支払利息比率」です。


純支払利息比率は「(支払利息ー受取配当金)÷売上高」という構成で数値が小さい方が良いため、


  • 支払利息 →少ない方が良い

  • 受取配当金→多い方が良い

  • 売上高  →多い方が良い


ということとなります。


指標改善の方法として、借入金を返済することで支払利息を減らすことができます。借入金を返済すると貸借対照表における総資本も減るため、「総資本売上総利益率」や「自己資本比率」にも良い影響をもたらします。


ただし、資金繰りが苦しくなっては元も子もありませんので注意が必要です。他の指標の意味についても知りたい方は、行政書士いのうえ法務事務所までご相談ください。



5.Z(技術職員数・元請完成工事高)

 Zは建設業者の技術力を図る指標で、審査項目は「技術職員数」と「元請完成工事高」です。審査項目通り、技術職員の人数を増やすこと、元請工事を多く受注することで点数を伸ばすことができます。


元請工事を増やすことについては普段から取り組まれている事業所様も多いかと思いますので、こちらでは技術職員中心に記載します。


技術職員はその有する資格等によって下記のように評点が振り分けされています。


技術職員の評点表

図から分かるように、より上位の資格を取得すればP点の点数を伸ばすことができます。


仕事をしながら勉強することは大変ですがそのような中でも従業員に資格を取得してもらうため、報奨金制度等で資格取得に対するモチベーション向上が有効と言えるでしょう。



6.W(社会性等その他の審査項目)

 Wは、経営事項審査における「その他の審査項目(社会性等)」を評価する項目です。X1が完成工事高、X2が自己資本や利益、Yが財務状況、Zが技術力を評価するのに対し、Wでは、建設業者としての社会的な取組や人材育成、防災活動、法令遵守、建設機械の保有状況など、非常に幅広い項目が評価されます。


そして、Wにはもう一つ大きな特徴があります。それは、完成工事高などと比較して、会社側の取組によって点数アップを目指しやすい項目が比較的多いという点です。具体的な項目は下記の通りです。


  • 建設工事の担い手の育成および確保に関する取組状況

  • 建設業の営業年数

  • 防災活動への貢献状況

  • 法令遵守の状況

  • 建設業の経理の状況

  • 研究開発の状況

  • 建設機械の保有状況

  • 国または国際標準化機構が定めた規格による認証や登録の状況


各内容については長くなるため別記事にて解説しています。詳しく内容を知りたい方は下記記事をご参照ください。



7.おわりに

 本記事では経営事項審査の総合評価点について解説をしました。ここまでは全て「点数を上げるための」内容でしたが、点数は上げれば上げるほど良いかというと必ずしもそうでもありません。


P点を取得し入札参加資格者名簿への登録申請(指名願)をすると、各自治体による独自の採点基準を加えて審査が行われます。


P点が「客観点」と言われるのに対し、この各自治体による採点基準は「主観点」と呼ばれます。


審査の結果、名簿への登録が適当であると判断されたときに「格付」が付与されます。格付が上位であればあるほど発注金額が大きく、下位であればあるほど金額は小さくなります。


経審は会社規模の評価も含まれるため、一般的に上位の格付には上場企業などの大手企業も増えてきます。比較的資本の小さい中小企業が大手企業と対等に戦うのことは、簡単なことではないと誰しも想像がつくかと思います。


そのため

  • どの自治体で

  • 何の工事種別を

  • どのくらいの金額で


請け負いたいかを明確にし、その希望に合わせた点数・格付けとなるよう調整してことが重要であると言えます。


目標の格付けに足りなそうであれば加点を取りにいく必要がありますし、足りていれば特段加点を取りに行く必要はありません。


自治体によっては希望する格付を明記したり、明記しないでもメモ等で希望を受付したりする自治体があります。あくまで希望ですので絶対反映してくれる訳ではありません。


行政書士いのうえ法務事務所では経審の書類作成だけでなく、点数アップ対策のご相談も承っております。


経審直前になっても対策しきれないことも多いですので、気になる方はぜひなるべく早くにご相談ください。



この記事を書いた人

井上知紀行政書士

井上知紀

行政書士・許認可×資金調達プロデューサー

 地方銀行での融資・法人営業経験を活かし、許認可と資金調達の両面から中小企業を支援。財務要件のある運送業・建設業・産廃業廃棄物収集運搬業許可を得意としている。


建設業許可や経営事項審査の報酬については下記ページをご参照ください。


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