経営事項審査とは、公共工事を発注者から直接請け負う場合に、建設業者が必ず受けなければならない建設業法に基づく審査のことです。
今こちらのページをご覧いただいている方は、事業の成長に伴い今後公共工事を請け負いたいと考えていらっしゃるのではないでしょうか。
こちらの記事では岩手県の建設業者向けに、経営事項審査(経審)について全体像を知っていただくべく大まかな流れを解説します。
1.全体の流れ
こちらでは3月決算の会社を例として解説すると、全体像は下記の通りとなります。

(盛岡市の場合)
上記流れの中で「経営規模等評価結果通知書・総合評定値通知書」を取得し、その総合評定値(P 点)の点数に応じて入札に参加できる公共工事が変わってきます。
上記について、1つの項目ごとに解説していきます。
2.決算変更届
建設業者には毎年決算終了後4ヶ月以内に「決算変更届」の提出が求められています。
こちらの記事はあくまで経審の全体像を掴むことが目的のため、決算変更届には言及しません。
毎年しっかりと提出されていることを前提とします。
万が一、提出されていない事業者様は過去に遡って速やかに提出しましょう。
注意点としては、経審用の決算変更届は「税抜」となります。
これは完成工事高等がP点取得に際し大きな意味を持ち、「税込」と「税抜」の事業者が混在すると正確に点数を算出できないからです。
税込の決算書を税抜に修正する必要がありますが、お客様自身もしくは行政書士が行うことは現実的ではありません。
税理士の先生に修正を依頼しましょう。
後ほど再度触れますが、初回申請時は決算変更届が過去3期分必要となります。
また冒頭で「建設業者」という用語を用いましたが、これは建設業許可業者を指します。
建設業許可を有していない事業者も含む場合は「建設業を営む者」と表現され、経審は建設業許可を有していることが前提となります。
3.経営状況分析
1章で触れた通り、経審は総合評定値(P点)を取得します。
このP点は総合点であり、「X1+X2+Y+Z+W」という各項目により成り立っています。
経営状況分析はこのうち「Y 点」に該当します。
内容としては直前期の財務諸表等を提出し、下記8つの指標に基づいて点数化されます。
分類 | 指標 | 大小どちらが良いか |
負債抵抗力 | 純支払利息比率 負債回転期間 | 小 |
収益性・効率性 | 総資本売上総利益率 売上高経常利益率 | 大 |
財務健全性 | 自己資本対固定資産比率 自己資本比率 | 大 |
絶対的力量 | 営業キャッシュフロー 利益剰余金 | 大 |
Y点の取得は許可行政庁ではなく、国土交通大臣の登録を受けた専門の「登録経営状況分析機関」によって行われます。
例としては
ワイズ公共データシステム株式会社
一般財団法人建設業情報管理センター
などいくつかありますが、どの分析機関に依頼しても点数自体は同じです。
この際、初回申請時は3期分の財務諸表等が必要となります。
申請手数料や結果取得までにかかる日数は各分析機関によって多少異なります。
このY点取得が遅れてしまうと以降の手続きが全て遅れ、入札参加の登録が間に合わなくなってしまうことにもなりかねません。
そのため決算変更届は正確に作成・毎期しっかりと提出し、かつ余裕を持って分析機関に経営状況分析を依頼しましよう。
4.経営事項審査
Y点を取得したら、次に行うものが「経営事項審査」です。こちらの記事はあくまで全体の流れを解説するもののため詳しくは解説しませんが、Y点以外の「X1・X2・Z・W 点」の評価を依頼し、P点を取得するものになります。
この経営事項審査は許可行政庁によって対面にて行われるのですが、いつでも受付してくれるわけではありません。
<岩手県の場合>
Y点取得後に所轄庁へ往復ハガキを郵送すると、審査日が通知されます。
その後審査日において対面審査が行われ、審査完了日に応じて結果通知書(P点)が発送されます。
ここでも記載事項の修正や添付資料の追加等があると審査完了日が遅くなり、今後の手続きに影響を及ぼす場合があります。
注意しましょう。

経営事項審査については別記事で解説していますので、下記記事をご参照ください。
【参照】総合評定値(P点)とは
5.入札参加資格申請
やっとP点を取得できたからと言って、これで終わりではありません。入札参加資格申請を行い、名簿に記載してもらう必要があります。
この入札参加資格申請は請け負いたい公共工事の発注主ごとに行う必要があり、例えば
盛岡市の場合 → 盛岡市
岩手県の場合 → 岩手県
に対して行います。
ここで、1点非常に大事なことをお伝えします。
4章の「経営事項審査」は随時受付していますが、この「入札参加資格申請」は自治体によって受付期間が異なります。
上記の例で言うと、
盛岡市の場合 → 例年10月
岩手県の場合 → 例年1月
となっています。
受付期間は非常に短く、この期間までにP点の取得が間に合わなかったりうっかり申請を忘れていたりすると、次の申請は翌年となります。
また申請を行ったからといって即名簿に登録されるわけではなく、一定の審査を経た上で名簿に記載される時期が定められています。
名簿に名前が載って初めて入札に参加することができます。
そのため、入札参加資格申請の際は
・入札参加資格申請の受付期間はいつか
・名簿に登録される時期はいつか
について、各自治体ごとにしっかりと把握しておく必要があります。
6.おわりに
ここまで経審の全体像について解説しましたが、全体像を掴むことができましたでしょうか?
ご覧いただいた通り経審はスケジュール管理が非常に重要です。
また1回申請すれば終わりではなくP点や名簿には有効期限があり、公共工事の入札参加をやめる場合を除き基本的に毎年行う必要があります。
さらにY点以外の「X1・X2・Z・W 点」は
・算定基礎となる完成工事高を2年にするか3年にするか
・技術職員を増やすかどうか
・建退共に加入するかどうか
等で点数UPを狙うことができます。
長くなるため詳細は別記事に譲りますが、経審についてはぜひ当事務所やお近くの行政書士にご相談ください。
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建設業許可や経営事項審査の報酬については下記ページをご参照ください。
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井上 知紀