補助金申請支援に携わっていると、「何か使える補助金はありますか」「キャッシュ改善のために補助金を使いたいです」と相談をいただくことがあります。
その度に「補助金は目的ではない」「補助金はキャッシュ稼ぎではない」と感じます。
こちらの記事では補助金採択率向上のため、また補助事業成功のために持ちたい視点について、元地方銀行員の補助金に詳しい行政書士が解説します。
【目次】
1.補助金は目的ではない
○○補助金をもらうために●●事業を行う
□□補助金をもらうために■■を開発する
など、色々な声をお聞きします。
それが自社にとって本当に必要なものならば、「〇〇補助金」や「□□補助金」がなくても行うものは行う、開発するものは開発すべきです。
補助金は下記図の通り基本的に審査結果が公表されてからの契約・事業実施となります。
また費用を全て支払った後に完了報告書を提出して初めて入金となるため、補助金入金まで半年〜1年かかることもあります。
(補助金の一般的な流れ)
最近では完了報告書の審査が非常に厳しくなり、何度も修正対応を求められることが稀ではありません。
一時的にキャッシュがマイナスになったり、金融機関からの借入を必要とする場合もあるでしょう。
中には申請段階では経費として認められたものの、書類不備などを理由として事業実施・完了報告段階では経費申請が否認されることもあります。
それでは補助金に右往左往させられない(補助金迷子にならない)ためには何が重要なのでしょうか。
2.補助金採択率向上のポイント
補助金迷子にならないために重要になってくるものは自社の「経営理念」や「ビジョン」です。
ここでは補助金の検討や事業計画作成を通し、経営改善や飛躍に繋げるために持ちたい視点を紹介します。
まず、補助金は単発(1回きり)で終わるケースは少なく数回や数年度に及ぶことが多くあり、回を重ねるごとに審査基準は厳しくなる傾向にあります。
大まかな視点として、下記の4つの視点が必要です。
・ 補助事業を行う目的や理由
・ 計画性
・ 効果や相乗効果
・ 実現可能性
1つずつ解説していきます。
1)補助事業を行う目的や理由
これは「なぜその事業・開発等を行うのか」や、「なぜその機器を導入するのか」という理由です。
単に
・労働生産性を向上するため
・投資対効果が得られるため
・売上が減少傾向にあり販路開拓を行うため
ではなく、まず「地域社会に貢献する」や「高齢者を幸せにする」といった経営理念・ビジョンがあるべきです。
それらの経営理念・ビジョンを踏まえ修正すると下記のようになります。
・新事業を行うことでさらに高付加価値なサービスを提供でき、より一層地域社会に貢献できる
・現状は無駄な間接業務が多く、「高齢者の幸せを実現する」というビジョンと乖離している。ICT機器を導入することで業務効率化され、直接業務に費やせる時間が増えてビジョン達成に近づける
上記のように現状とのギャップを埋める姿勢が必要です。
何か新しいことをする際には多からず少なからず負担が発生します。
この目的や理由を疎かにしてしまうと迷子になり、
「なぜこの事業をやるのだろう」
「なぜこの機能を開発する必要があるのだろう」
「なぜこの機械を導入するのだろう」
などと法人内部でも疑心暗鬼となります。
実際の事業実施主体である現場従業員のモチベーションが上がらず、当初期待した効果が得られない可能性が高まってしまいます。
「なぜ行うのか」、入り口段階でしっかりと共通目的を確認することで迷子になることを防ぐことができます。
2)計画性
○○補助金があったので●●事業を行うことにしました
□□補助金があったので■■を開発することにしました
と突発的なものではなく、経営理念やビジョンを元に計画的に考えていた(準備していた)場合の方が補助金の計画としては高い評価となります。
そのためにも定期的に経営理念やビジョンと現状のギャップ把握に努め、自社に何が必要なのか検討する体制が必要です。
数年度に渡り定期的に公募されている補助金もありますので中長期的に計画を立てることも有効です。
補助金の審査では通常より点数が高くなる「加点」項目がありますが、この加点項目は一朝一夕で取得できなものも多々あります。
例)くるみん認定、経営力向上計画など
また製品やサービスについては1つのものを決め打ちするではなく、比較・検討の時間を十分に確保し、申請書には十分な検討を経て決定したことを示したいです。
3)効果・相乗効果
既存事業に対し何か新しいものを取り入れる場合、自社で現状業務フローの棚卸しを行い調査した上で、何がどの程度改善されるのか具体的に算出することが理想です。
ただ日々の業務をこなしながら自社単体で行うことが難しい場合もあるかと思います。
その場合は購入するメーカーや代理店の方を巻き込み、改善計画を一緒に考えてもらうことをオススメします。
むしろ買って終わりのメーカーや代理店より、補助事業を伴走支援してくれるメーカーや代理店から購入することが望ましいとすら言えます。
労働者の賃上げムードが加速する中、どの程度無駄な作業が改善されまた売上が向上し、どの程度賃上げを行うかは多くの補助金で聞かれる項目です。
また相乗効果については、特に新しく販路を開拓する際や新事業を行う際に必要な視点です。
タピオカ、高級パン、唐揚げ、脱毛サロンなど、ビジネスには流行があります。
流行に乗れば一定の収益を得られる可能性はありますが、流行だからという理由だけではリスクが高いと言えます。
一般的に新規事業は既存事業との相乗効果が高いほど事業成功可能性が高まると言われています。
ただこの相乗効果は意外と掴みづらく、客観的にならないとあらゆるものが「相乗効果」と思えてしまいます。
例えば行政書士である私が脱毛サロンを始めるとした場合、
・事務所に相談に来所された方に脱毛サロンの紹介をする
↓
・脱毛サロンに事務所のパンフレットを配置する
↓
・「相互集客可能で相乗効果あり!」といった具合です。
当事務所の場合、中小企業支援がメインということもあり顧客層は40〜50代男性の方が多いです。
脱毛は20〜30代の方(特に女性の割合)が多いですので、実際には高い相乗効果を期待できません。
自分だけで考えてしまうと「相乗効果がある」という主観的な視点になってしまうため、本当に(高い)相乗効果があるのか客観的な視点を入れることをお勧めします。
4)実現可能性
補助金である以上、期待した成果が出ないと事務局(または国・地方自治体)としては補助金を出した意味がなくなってしまいます。
そのためどのようなスケジュールで誰が何を担当するか等を根拠とし、見込んだ成果を出せる可能性が高いことを示す必要があります。
先述した脱毛サロンの例で言いますと、私は脱毛をしたことはありませんし脱毛サロンで勤務した経験もありません。
それでも「私は脱毛サロンを開業し軌道に乗せることができます!」と言っても実現可能性は低いと判断されます。
・自分でも定期的に脱毛に通いかつ通信講座や資格取得を通し研究している
・社内に脱毛サロン勤務経験者がいる
などの事実があれば、実現可能性はあると言えるでしょう。
言わばこれは自社の「強みを活かせるか」ということに繋がります。
事業ありきではなく、「自社の強みは何なのか」「活かせる強みはあるのか」という視点を持ちたいです。
また、機器の導入等に関しては委員会や検討グループを組成することも良いでしょう。
1人に任せるよりも組織としてPDCAを回していく体制があると、成果を出せる可能性をより高めることができます。
例)委員会を組成し、導入期の当初3ヶ月は週1回集まり現状把握・進捗状況の把握に努める
3.おわりに
ここまで記載した内容は補助金の検討や事業計画作成を通して持ちたい視点の一部となります。
実際には経営上の計画(費用対効果があるのか)等も当然ながら検討します。
これらを自社単独で行い採択までもっていくには多大な労力を要し難易度は中〜高です。
そのために当事務所をはじめとして補助金申請支援サービスを行う事業者があります。
補助金を検討し計画書を作成する中で現状とのギャップを洗い出し、自分達が置かれている状況について認識し目標を設定する。
そしてその定量的・定性的目標達成に向かって一緒に向かっていくことこそが、真の意味での補助金申請支援であると考えます。
当事務所は地域密着方の事務所だからこそ採択だけに注力するのではなく、実際に補助金が入金され、またその後の報告までしっかりとフォローいたします。
ぜひ、お気軽にご相談くださいませ。
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