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執筆者の写真行政書士 井上 知紀

収益納付とは?-補助金の落とし穴-

更新日:11月28日

 補助金に携わる方は知っておくべき「収益納付」という制度をご存知ですか?この収益納付制度について知らないと、補助金が交付されたあとに「こんなはずでは…」となる恐れがあります。


この収益納付制度は補助金が交付された段階ではなく、交付された数年後に表面化するケースが多いです。

(補助金交付段階で交付金額から差し引くもの等もあります)


補助金の獲得にのみ注力している補助金コンサルタントもおり、収益納付制度について説明しない人やそもそも理解すらしていない人もいます。


そのためこちらの記事では事業者様自身が補助金制度について理解を深めるべく、補助金に詳しい岩手県盛岡市の行政書士が収益納付制度について解説します。


補助金に詳しい井上行政書士


【目次】




1.補助金とは

 収益納付制度について説明する前に、そもそもなぜ収益納付が必要なのかを理解すべく補助金の概要について解説します。


補助金は私たちが支払う税金を財源として、国や県・市町村等が各自治体の課題解決のために交付するものです。


国や地域によって課題は異なるため市区町村まで含めると補助金は非常に多くの種類があります。


補助金は税金で賄われているからこそ、課題を解決しかつ適切に使用されなければいけません。


ここで「課題」とは、

・売上拡大

・生産性向上

・人材確保や賃上げ

等が該当します。


そのためいくら公募要領上の要件に合致していたとしても、効果がでない(薄い)事業や他に良い事業があれば採択されない場合があります。


むしろ採択されない可能性の方が高いと言えます。


ここが、要件が満たされていれば必ず支給される助成金と大きく異なる点です。


また100%全額補助ではなく1/2や3/4補助といった形が主流で、多からず少なからず自己負担が発生します。


審査基準・審査項目は基本的に公募要領にて明示されます。


事業への着手は原則として審査結果が発表されてからであり事前着手はできません。


費用は先行して発生し実際に補助金が交付されるには1、2ヶ月から長いものだと1年程度かかるものもあります。


現預金やキャッシュフロー(融資等含む)を確保できなければ、そもそも補助金を使った事業計画自体取り組むことができません。


指でバツをする人


2.どんな補助金があるの?

 前章で補助金の種類は非常に多いと説明しましたが、では実際どんな補助金があるのでしょうか?


こちらの章では国と岩手県内の補助金について、ここ数年の例を見ていきたいと思います。


1)国が主体のもの

・事業再構築補助金

 コロナ禍において多大な影響を受けた中小企業が業態や業種転換を図るべく公募された補助金。

・小規模事業者持続化補助金

 小規模事業者の販路開拓を主目的とし公募された補助金。最近では災害枠として、大雨や地震によって被害を受けた地域に特化して公募された回もある。

・省力化補助金

 人手不足を解消するためロボットや無人受付機等による省力化を推進するために公募された補助金。

・IT導入補助金

 コロナ禍においては非接触やテレワークを、昨今ではインボイス制度への対応を推進すべく公募された補助金。

などが挙げられます。


国が主体で申請数が多くなるため電子申請が用いられていることが多いです。


また国が主体ではありますが、運営自体は県や民間企業に委託されて行われる場合があります。


2)岩手県内

・介護テクノロジー導入支援事業(岩手県)

 介護業界の生産性向上を図るべく国が予算を確保し基準を設定し、その基準に基づき県が公募する補助金。

・建設DX人材育成支援事業(岩手県)

 岩手県内の建設業者のDX化を推進すべく県が主体となり公募された補助金。

・まちなか創業支援補助金(花巻市)

 花巻市内の一定地域内において新しく創業する中小企業に対し、出店(改装)や広告費を補助する補助金。


このように県や市町村の補助金は地域ごとの課題によって特色があります。


上記に記載した花巻市の補助金は、駅や商店街の活性化を目的としているのだろうなどと考察できます。



3.収益納付とは

 ここまで補助金の概要や昨今の公募事例について見てきました。


こちらでは本題の収益納付制度について解説をします。


収益納付制度は「(補助金は税金で賄われているからこそ、)補助金により実施した事業によって収益が発生した場合に、補助金受取額を上限に収益(※)の一部または全部を国庫に返納する制度」のことです。


※収益とは…収入から経費を引いた額


可愛く言うと、「補助金を使ってこその成功なんだから、儲けた分は返してね」という制度です。


これは補助金等に係る予算の執行の適正化に関する法律等の規定により定められています。


ただし、いかなる場合も収益納付が必要となるわけではありません。


収益納付が必要となるのは、補助金により直接収益が生じた場合に限られます。


この「直接収益が生じた」という言葉は非常にあいまいな言葉ですが、例えば小規模事業者持続化補助金では下記が例として挙げられています。


・補助金で購入した設備で生産した商品を販売したことによる利益

・補助金で構築したECサイトを通し販売した商品による利益

・補助金により出展した展示会で販売した商品による利益

など


また他方

・チラシ作成や配布

・HPの作成(EC構築除く)

・店舗改装

などは、補助金による直接的な効果としての因果関係が明確でないとして収益納付の対象外であると例示されています。


自社が行う補助事業について収益納付が必要かどうか分からない場合は、運営主体に確認されることを推奨します。


事業者側として収益納付をしたくない気持ちはわかりますが、だからと言って効果報告の際に虚偽申請することは絶対にやめましょう。


補助金によりリスクを減らして事業に取り組めることや収益性の悪化を防げることは事実ですので、収益が発生した場合には適切に申告し納付しましょう。


収益納付


4.おわりに

 こちらの記事では補助金に関する収益納付制度について解説しました。


補助金が交付され手放しで喜んでいると数年後に収益納付を求められる場合があります。


昨今では補助金ブームに乗じ補助金コンサルティングを行う業者が増えています。


ひどい業者では採択のみに注力し成功報酬を受け取った後、実施報告・補助金申請は事業者に丸投げという業者もあります。


補助金は補助金を受け取り適切な報告を行うまでが補助金です。


税金が財源である補助金を有効活用し、なおかつ想定外の自体が発生しないようにするためにも、長くお付き合いできる業者を選ばれることをおすすめします。


また、今後申請を予定されている補助金に収益納付制度があるかどうか公募要領をよく確認し、場合によっては運営主体に確認されると良いかと思います。


うまく補助金を活用し事業の拡大を図っていけたらいいですね。



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