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外国人が支払う年金は掛け捨て?脱退一時金制度について理解する

  • 執筆者の写真: 行政書士 井上 知紀
    行政書士 井上 知紀
  • 6月15日
  • 読了時間: 6分

近年、日本の労働市場において外国人材の存在感が一層増す中で、社会保険料の未納問題が大きく報道されています。


未納の原因は様々ありますが、そもそも制度自体を詳しく理解していないことが挙げられます。


本記事では外国人を雇用している岩手県の企業様向けに、外国人従業員に対し年金制度の説明ができるよう、国民年金制度に基づいて脱退一時金制度について解説します。


※厚生年金制度も大きくは変わりません


1.背景

 現在の日本における年金制度は、日本在住の方であれば外国籍の方であっても強制加入です。


日本の公的年金制度は、国民年金と厚生年金保険の2階建て構造になっています。


国民年金:日本に住む20歳以上60歳未満のすべての方が加入する年金です。自営業者や学生などが対象となります。

厚生年金保険:会社に勤める方が加入する年金です。国民年金に上乗せされる形で加入し、保険料は会社と従業員で折半します。


日本人の場合でも同様ですが、将来年金を受け取るには一定以上の年金加入年数等が必要となります。


これは受給資格期間(※)と呼ばれます。


※受給資格期間・・・年金の支払いを受けるために加入が必要な最低期間のこと。2025年6月現在では10年。


外国籍の方が年金年金を毎月支払っても、短期間で本国へ戻ってしまうと受給資格期間を満たせずに掛け捨てとなってしまいます。


上記を解決する最も良い手段は日本と社会保障協定を結ぶことですが、2025年6月現在協定を結んでいる国は23か国となっています。


この社会保障協定は下記のような制度です。


  • 「保険料の二重負担」を防止するために、加入するべき制度を二国間で調整する(二重加入の防止)

  • 年金受給資格を確保するために、両国の年金制度への加入期間を通算することによって、年金受給のために必要とされる加入期間の要件を満たしやすくする(年金加入期間の通算)


ただ先述の通り協定を結んでいる国は少なく、23か国以外の人にとっては日本の年金制度へ加入するメリットを感じにくく、未納に繋がってしまいます。


そこで設計された制度が「脱退一時金制度」です。


多くの外国人従業員の方々にとって、日本での就労は一時的な滞在であり、いずれは母国へ帰国されることを考えていらっしゃるケースが少なくありません。


そうした中で、「日本で納めた年金保険料は、帰国したらどうなるのか?」という疑問は当然のこととして生じます。



2.脱退一時金制度とは?

 脱退一時金制度とは、日本に在住していた外国籍の方が、日本での年金制度への加入期間が短く将来的に日本の年金を受け取る要件を満たさない場合に、それまでに納めた年金保険料の一部が返還される制度です。


具体的には、以下の要件をすべて満たす場合に脱退一時金を請求することができます。


  • 日本国籍を有していないこと

  • 国民年金(厚生年金)の被保険者でないこと

  • 保険料納付済期間等が6ヶ月以上あること

  • 日本国内に住所を有しないこと

  • 障害基礎年金などの受給権を有したことがないことと

  • 最後に被保険者の資格を喪失してから2年以上経過していないこと


納めた年金保険料の全額が戻ってくるわけではない点に注意が必要です。


(この点不満に感じる方もいらっしゃるかと思いますが、人口減少化にある日本においては30代日本国籍である筆者も同様です。筆者自身も現行の年金制度には不満を抱いています。支払ってはいますが…)


この制度は、外国人従業員の方々が安心して日本で働き、そして母国へ帰国できるようサポートする目的で設けられています。


雇用する側としてはこの制度について正確に理解し、必要に応じて従業員の方へ情報提供することで、加入に対する理解を得ることができます。



3.脱退一時金の対象となる期間と金額

 脱退一時金の対象となるのは、国民年金または厚生年金保険の被保険者期間です。ただし、先述の通り実際に納めた保険料全額が返還されるわけではありません。


脱退一時金の金額は、加入していた年金制度の種類(国民年金か厚生年金保険か)、保険料を納めた期間、そして厚生年金保険の場合は平均標準報酬月額などによって計算されます。


一般的に加入期間が長いほど、また厚生年金保険の場合は賃金が高いほど、脱退一時金の額も大きくなります。


脱退一時金の額は、基準月の属する年度における保険料の額の半分に、保険料納付済期間等に月数に応じて、「政令で定める数」をかけた額とされています(国民年金の場合)。


脱退一時金の額=基準月の属する年度における保険料の額÷2×政令に定める数


この「政令に定める数」は、保険料納付済み期間等の月数に応じ下記の通り規定されています。

保険料納付済期間等の月数

政令で定める数

6月以上12月未満

6

12月以上18月未満

12

18月以上24月未満

18

24月以上30月未満

24

30月以上36月未満

30

36月以上42月未満

36

42月以上48月未満

42

48月以上54月未満

48

54月以上60月未満

54

60月以上

60



4.最近の動向

 上記の図を見て分かった方もいらっしゃるかもしれませんが、60月以上加入しても政令で定める数は「60」のままです、


そうすると60月以上加入しても脱退一時金の額に変化がなく、長期的な加入のメリットがなくなります。


昨今、在留外国人の増加や滞在期間の長期化に伴い、脱退一時金の必要性が高まっています。


そのため今後は8年までカウントできるように見直しが行われる予定です。


現状はビザ発行や在留資格の更新等において社会保険への加入が要件とされておりませんが、今後は審査の中でかなり厳しく見られ、かつ加入が要件とされる可能性も否定できません。



5.おわりに

 ここまで、公的年金における脱退一時金制度について解説しました。


社会保険料の未納は日本の財政悪化を招き、ゆくゆくは日本人にとっても悪影響を及ぼします。


そのため雇用主である我々日本人が(もちろん外国人の方も)制度について理解し、案内することで、微力ながらも未納問題解決に繋がります。


行政書士いのうえ法務事務所では、外国人材の在留資格(ビザ)申請、各種契約書の作成、日常生活の相談等、外国人雇用に関する法務サポートを専門としております。


言葉の壁や文化の違いから生じる誤解や不安を解消し、企業と外国人従業員の皆様が共に安心して、そして力強く事業を推進できるよう、きめ細やかなサポートを提供することをお約束いたします。



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