岩手県で貨物自動車運送事業を始めるために必要な開業資金の目安
- 行政書士 井上 知紀
- 4月26日
- 読了時間: 7分
更新日:4月26日
こんにちは、行政書士いのうえ法務事務所の井上です。私は開業以来、運送業等の許認可申請サポートを専門としてきました。
その中で、特に貨物自動車運送事業の新規参入をご検討の方々から多くご相談をいただいております。
そこでよくいただくご質問が「許可を取るために実際どれくらいの資金が必要なのか」というご質問です。
今回は、岩手県内で貨物自動車運送事業を立ち上げる際に必要となる資金について、設備資金と運転資金の両面から詳しくご説明いたします。
業界への参入を検討されている方々の参考になれば幸いです。
【目次】
2.設備資金の内訳
3.運転資金の内訳
5.費用総額の資産
6.資金調達方法
8.おわりに
1. 貨物自動車運送事業の種類と必要資金の概要
まず、貨物自動車運送事業には大きく分けて以下の種類があります。
一般貨物自動車運送事業(いわゆる「緑ナンバー」)
特定貨物自動車運送事業
貨物軽自動車運送事業(いわゆる「黒ナンバー」)
この中でも最も一般的な「一般貨物自動車運送事業」を例に、必要資金を見ていきます。
一般貨物自動車運送事業を開始するためには、国土交通省の許可基準で定められた「資金要件」を満たす必要があります。
これは、事業を安定して継続できるだけの資金力があることを証明するためのものです。
具体的には、以下の2つの資金が必要になります。
設備資金:車両購入費、営業所・車庫の確保費用など
運転資金:日々の事業運営に必要な資金(人件費、燃料費など)
許可申請時には下記資金計画表を提出しますが、全項目を見ていくと長くなるため金額として大きくなる部分を中心に解説します。

2. 設備資金の内訳
2-1. 車両購入費
一般貨物自動車運送事業の許可基準では、最低5台の事業用トラックが必要です。新車を購入する場合と中古車を購入する場合で費用は大きく異なります。
□新車の場合
2トントラック:約600万円/台 × 5台 = 3,000万円
4トントラック:約1,000万円/台 × 5台 = 5,000万円
10トントラック:約2,000万円/台 × 5台 = 10,000万円
□中古車の場合
2トントラック:約300万円/台 × 5台 = 1,500万円
4トントラック:約500万円/台 × 5台 = 2,500万円
10トントラック:約1,000万円/台 × 5台 = 5,000万円
なお、車両はリースでの調達も可能です。リースの場合、初期費用は抑えられますが、月々のリース料が発生します。例えば、2トントラックのリース料は月額約6万円~程度です。
2-2. 事務所・車庫の確保費用
事業用の営業所と車庫が必要となります。車庫は車両1台につき、最低でも前後左右0.5メートル確保できなければいけません。
□自社所有の場合
土地代:岩手県内でも地域によって大きく異なりますが数百万円程度
建物代:新築するケースは少ないですので割愛します
□賃貸の場合
敷金・礼金:賃料の2ヶ月分(月額15万円の場合、30万円)
月額賃料:事務所は10万円程度、車庫は車両5台分で15万円程度
2-3. その他設備費用
デジタルタコグラフ:約10万円/台 × 5台 = 50万円
事務機器(固定電話、パソコン、プリンターなど):約30万円
作業用器具(ラッシングベルト、台車など):約20万円
3. 運転資金の内訳
運転資金は事業を開始してから安定的な収入が得られるまでの間、会社を維持するために必要な資金です。岩手県で許可申請をするためには最低6ヶ月分の運転資金を確保しなければいけません。
3-1. 人件費
役員兼ドライバー:月給50万円/人 × 1人 × 6ヶ月 = 300万円
ドライバー:月給20万円/人 × 4人 × 6ヶ月 = 480万円
事務員:月給20万円/人 × 1人 × 6ヶ月 = 120万円
社会保険料(給与の約15%):約135万円(6ヶ月分)
3-2. 車両関連費用
燃料費:約20万円/台/月 × 5台 × 6ヶ月 = 600万円
車両保険料:約20万円/台/年× 5台 = 100万円(1年分)
車検・整備費:約5万円/台/6ヶ月 × 5台 = 25万円
3-3. その他運転資金
営業所賃料:約10万円/月 × 6ヶ月 = 60万円
車庫賃料:約15万円/月 × 6ヶ月 = 90万円
通信費(電話、インターネットなど):約5万円/月 × 6ヶ月 = 30万円
水道光熱費:約5万円/月 × 3ヶ月 = 15万円
事務用品費:約3万円/月 × 3ヶ月 = 9万円
広告宣伝費:約10万円(初期費用として)

上記はあくまで例ですが、営業所としてデスク、電話、パソコン、キャビネット等があるかどうか確認されます。
4. 許認可申請関連費用
一般貨物自動車運送事業許可申請手数料:12万円(登録免許税)
行政書士報酬:約50万円
登録免許税は許可取得後に納付書が郵送されきて、その後納付となります。
行政書士の報酬は各事務所によって異なりますので、当事務所やお近くの行政書士にご確認ください。
5. 費用総額の試算
以上の費用を合計すると、一般貨物自動車運送事業を開始するための資金は、以下のようになります。
【中古車・賃貸物件で開始した場合】
設備資金:約1,500万円(中古2トントラック5台、機器類など)
運転資金(6ヶ月分):約2,000万円
許認可関連費用:約70万円
合計:約3,570万円
これはあくまで0から運送業を開始する際に目安です。
車両をすでに数台所有していたり、購入ではなくリースにしたり、車庫用土地や営業所を所有していたりする場合は金額が変わってきます。
6. 資金調達の方法
このように、貨物自動車運送事業を開始するためには相当額の資金が必要となります。資金調達の主な方法としては以下のようなものがあります。
金融機関からの融資:日本政策金融公庫や銀行などからの事業資金融資。創業融資や車両購入向けの設備資金融資などがあります。
リース・割賦:車両や機器類をリースや割賦で導入する方法。初期投資を抑えられます。
補助金・助成金:開業の際し利用できる補助金についてご質問いただくこともありますが、正直ないと思っていただいた方が良いです。
7. 行政書士としてのアドバイス
私が行政書士として多くの運送業参入事業者様をサポートしてきた経験から、以下のアドバイスを申し上げます。
1. 資金計画は固めに作成する
事業開始後、想定外の出費が発生することはよくあります。また、売上が安定するまでには時間がかかります。許可申請時の資金計画では必要資金を低く見せるために、計画を甘く作成し申請するケースもあるようです。
ですが審査時点で補正指示が入り、自己資金要件を満たせず取り下げとなると元も子もありません。許可申請のためのみならず安定した資金繰りのためにも、資金計画は固めに作成されることをおすすめします。
2. 段階的に事業を拡大する
貨物自動車運送事業は車庫用の土地、車両に大きな資金を必要とします。初めから大規模な投資をするのではなく、必要最低限の規模でスタートし、事業が軌道に乗ってから徐々に拡大していく方法も検討しましょう。
3. 専門家のサポートを活用する
許認可申請だけでなく、資金計画や経営計画の策定においても、行政書士などの専門家や金融機関からのサポートを受けることで、無駄なコストを削減し、円滑な事業開始が可能になります。
4. 特殊車両は慎重に検討
冷凍車や特殊車両は通常のトラックと比べて高額です。事業開始時は汎用性の高い車両から導入し、特殊車両は顧客のニーズが確定してから導入するという順序も考慮すべきでしょう。
8.おわりに
これまで見てきたように、貨物自動車運送事業の開始には非常に多くの資金が必要です。しかし、適切な事業計画と準備があれば、安定した事業運営が可能になります。
今後はドライバー不足により安定的な物流の確保が難しいと言われています。
そのような中で運送業への参入は社会的に大きな意味を持ち、今後の岩手・日本の物流を支える重要な産業として新たな担い手が増えていくことを願っております。
行政書士いのうえ法務事務所では、貨物自動車運送事業の許可申請はもちろん、資金計画のアドバイスや事業計画書の作成支援なども行っております。
運送業への参入をお考えの方は、お気軽にご相談ください。
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一般貨物自動車運送事業開業までの流れや報酬については、専用ページをご用意しておりますのでそちらをご参照ください。
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