運行管理者基礎講習とは何か
- 行政書士 井上 知紀
- 12月15日
- 読了時間: 6分
更新日:12月15日
こんにちは、行政書士いのうえ法務事務所の井上と申します。私は貨物自動車運送事業を始めようとされる岩手県内の方から、運送業許可や運行管理体制に関するご相談を多くいただいています。
車両が5台かつ運転手は5人という最低基準で開始される事業者様も多い中、運行管理者と運行管理者補助者の確保が、許認可要件上最も重要と言っても過言ではありません。
今回は“運行管理者補助者”に焦点をあて、「運行管理者基礎講習とは何か」について私の実際の経験を元に解説していきます。
【目次】
1.そもそも運行管理者と運行管理者補助者とは
貨物自動車運送事業を行うためには、営業所ごとに「運行管理者」を選任することが法律で義務付けられています。運行管理者は、ドライバーの点呼、労働時間の管理、健康状態の把握、事故防止のための指導など、運送事業の安全を支える重要な役割を担います。
一方で、実務の現場では運行管理者一人ですべてを対応することが難しいケースも多く、その補佐役として位置付けられているのが「運行管理者補助者」です。補助者は運行管理者の指示・監督のもとで、点呼の補助や書類管理などを行います。
重要な点として運行管理者補助者は誰でもすぐになれるわけではなく、
運行管理者資格を有していること
一定の講習を修了していること
のどちらかが必要になります。その一定の講習こそが「運行管理者基礎講習」です。
2.運行管理者基礎講習とは何か
運行管理者基礎講習とは国土交通大臣が指定する講習機関が実施する法定講習で、運送事業における安全管理の基礎を学ぶためのものです。
主に将来運行管理者を目指す方や、運行管理者補助者として業務に従事する予定の方が受講対象となります。
また所属事業者において運行管理者に選任された方でも、過去に基礎講習を受講したことのない方は受講する必要があります。
独立行政法人自動車事故対策機構(以下、ナスバ)が開催しています。詳しい日程や会場についてはナスバのHPをご確認ください。
講習では、貨物自動車運送事業法をはじめとする関係法令、点呼の方法、ドライバーの労務管理、事故防止対策、過労運転の防止など、現場で必須となる知識が体系的に整理されています。
なお、講習自体は「貨物」と「旅客」の2種類あります。旅客の講習を修了していても貨物の運行管理者補助者にはなれませんので、受講の際は注意してください。

3.運行管理者基礎講習の受講要件と講習内容
運行管理者基礎講習は特別な学歴や実務経験がなくても受講することができます。そのため、貨物運送事業をこれから始める予定の方や将来的に運行管理業務に関わりたいと考えている方にとって、入り口として非常に適した講習と言えます。
講習は複数日にわたって実施されるのが一般的です。2025年12月現在、講習形式としては
座学により講師が講義を進める形式
座学により動画を視聴する方式
自宅で受講するe-learning方式(オンライン)
の3つがあり、受講料は8,900円です(2025年12月時点)。講習形式は異なりますが、勉強する具体的な内容としては以下のような項目が含まれます。
貨物自動車運送事業法と道路運送法
労働基準法を元にした労務管理
点呼の実施方法や記録の取り方
アルコールチェックの重要性
上記の通り日々の運行管理業務に直結する実務的な内容が扱われ、さらに過労運転や健康起因事故を防止するための考え方、事故発生時の初動対応、再発防止策の立て方など、安全管理の根幹に関わるテーマも含まれます。
単なる知識の詰め込みではなく、「なぜその管理が必要なのか」という背景まで学べる点が、基礎講習の大きな特徴です。
私は座学により講師が講義を進める形式を選択し盛岡会場で受講したのですが、70人以上の方が参加されていました。
その時の講義内容は下記となります。

3日間に渡りだいたい9:30~16:30の間拘束されるため、なかなか大変な講習でした。一定の覚悟を持った上で臨まれると良いと思います。
4.基礎講習修了後にできることと注意点
運行管理者基礎講習を修了すると修了証が発行されます。以前までは黒い手帳が交付されその手帳に受講年月日とハンコが押されていたのですが、現在では廃止となっています。

また修了日以降、運行管理者補助者として業務に従事することが可能になります。ただし、あくまで「補助者」であり最終的な責任は運行管理者が負う点には注意が必要です。
現場では補助者が点呼を実施する場面もありますが、その場合でも運行管理者による適切な監督体制が求められます。補助者に任せきりにしてしまうと監査や行政指導の際に問題視される可能性があります。
また、基礎講習を修了したからといってそれで学びが終わるわけではありません。法令や運用は改正されることも多く、日々の実務を通じて知識をアップデートしていく姿勢が重要です。
基礎講習を修了すると実務経験がなくても運行管理者試験を受験できるようになりますので、次のステップアップとして受験してみるのも良いと思います。
5.おわりに
貨物運送事業を開業する場合、まずは車両5台に運転手5台で、かつ「運行管理者と運行管理者補助者は運転手と兼務」というケースも多いです。
そのような状況では、運行管理者基礎講習を活用し、早い段階から補助者を育成することが安定した事業運営につながります。
貨物運送事業は許可を取ることがゴールではありません。安全管理体制を継続的に構築・運用していくことこそが、本当のスタートです。運行管理者基礎講習は、その第一歩として非常に重要な位置付けにあります。
本記事では運行管理者基礎講習とは何かついて解説をしました。運行管理者補助者になるために必要な運行管理者基礎講習は、貨物運送事業の安全と信頼を支える基礎となる制度です。
これから岩手県内で貨物運送事業を開業しようと考えている方にとって、基礎講習の理解は避けては通れません。
行政書士いのうえ法務事務所は運送業許可専門の行政書士として、新規開業や運行管理体制の整備等に関するご相談にも対応しています。
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