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執筆者の写真行政書士 井上 知紀

しっかり理解!運送業における車庫の前面道路幅

更新日:6 日前

 貨物自動車運送事業で使用する車庫には、前面道路幅について要件があります。こちらの記事では岩手・盛岡の許認可に詳しい行政書士が、貨物自動車運送事業における車庫の前面道路幅について解説します。


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〜目次〜

 


1.前面道路とは

 貨物自動車運送事業許可を取得するためには、一定の要件を満たした車庫が必要です。


その中で車両と車庫前面道路の関係性について、車両制限令に抵触しないことが求められます。


この「前面道路」とは車庫から一番近い公道のことであり私道は含みません。


車両が通行できればいいというわけではなく、具体的に「○m以上」というルールがあります。


また道路幅は道路管理者より発行される幅員証明書によって判断されます。


盛岡市の道路幅員証明書(例)

(幅員証明書の見本)


では、実際どのようなルールがあるのでしょうか?



2.車両制限令による制限

 道路を走行できる車両の幅については「車両制限令」という法律があり、車両制限令第5条では市街地区域内の道路について、第6条では市街地区域外の道路について定めています。


※市街地区域とは

すでに市街地を形成している区域及びおおむね10年以内に優先的かつ計画的に市街化を図るべき区域


各条文について詳しく見ていきます。


1)第5条第1項

第五条 市街地を形成している区域(以下「市街地区域」という。)内の道路で、道路管理者が自動車の交通量がきわめて少ないと認めて指定したもの又は一方通行とされているものを通行する車両の幅は、当該道路の車道の幅員(歩道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない道路で、その路肩の幅員が明らかでないもの又はその路肩の幅員の合計が一メートル未満(トンネル、橋又は高架の道路にあつては、〇・五メートル未満)のものにあつては、当該道路の路面の幅員から一メートル(トンネル、橋又は高架の道路にあつては、〇・五メートル)を減じたものとする。以下同じ。)から〇・五メートルを減じたものをこえないものでなければならない。

道路管理者が自動車の交通量が極めて少ないと認めて指定した道路は、一般的に「極小指定道路」と呼ばれます。


そのため第5条第1項は極小指定道路または一方通行の道路についての条文です。


この場合、道路幅から0.5mを引いた幅までの車両であれば通行できます。


【例:幅員3.0mの場合】

 幅員3.0m − 制限0.5m = 車幅2.5mまでの車両は通行可



2)第5条第2項

2 市街地区域内の道路で前項に規定するもの以外のものを通行する車両の幅は、当該道路の車道の幅員から〇・五メートルを減じたものの二分の一をこえないものでなければならない。

こちらは一般的な対面道路についての条文で、道路幅から0.5mを差し引きそれを1/2(対面道路のため)した幅までの車両が通行できます。


【例:幅員6mの場合】

 (幅員6m − 制限0.5m)÷ 2 = 車幅2.75mまでの車両は通行可



3)第5条第3項

3 市街地区域内の駅前、繁華街等にある歩行者の多い道路で道路管理者が指定したものの歩道又は自転車歩行者道のいずれをも有しない区間を道路管理者が指定した時間内に通行する車両についての前二項の規定の適用については、第一項中「〇・五メートルを減じたもの」とあるのは「一メートルを減じたもの」と、第二項中「〇・五メートル」とあるのは「一・五メートル」とする。

こちらは駅前や繁華街など歩行者が多い道路の場合、より一層安全性を確保するために規制を強化する条文です。


第1項と第2項それぞれ幅員から0.5mを引いて計算しますが、駅前や繁華街等の場合は差し引く幅が大きくなります。


具体的には第1項は1m、第2項は1.5m差し引かれます。


【例:幅員3.0mの場合(第1項)】

 幅員3.0m − 制限1.0m = 車幅2.0mまでの車両は通行可


【例:幅員3.0mの場合(第2項)】

 (幅員6m − 制限1.5m)÷ 2m = 車幅2.25mまでの車両は通行可



4)第6条第1項

第六条 市街地区域外の道路(道路管理者が自動車の交通量がきわめて少ないと認めて指定したものを除く。以下次項において同じ。)で、一方通行とされているもの又はその道路におおむね三百メートル以内の区間ごとに待避所があるもの(道路管理者が自動車の交通量が多いため当該待避所のみでは車両のすれ違いに支障があると認めて指定したものを除く。)を通行する車両の幅は、当該道路の車道の幅員から〇・五メートルを減じたものをこえないものでなければならない。

極小指定道路以外で、一方通行またはおおむね300mごとに待避所がある道路については、道路の幅員から0.5mを引いた幅までの車両が通行できます。


【例:幅3.0mの場合】

 幅員3.0m − 制限0.5m = 車幅2.5mまでの車両は通行可



5)第6条第2項

2 市街地区域外の道路で前項に規定するもの以外のものを通行する車両の幅は、当該道路の車道の幅員の二分の一をこえないものでなければならない。

市街化区域外かつ第1項以外の道路では、幅員1/2までの幅の車両が通行できます。


【例:幅員6.0mの場合】

 幅員6.0m÷2 = 車幅3.0mまでの車両は通行可



3.幅員が足りないときは

 ここからは当事務所の経験を含めて、3つの方法について記載します。


1)特殊車両通行認定を受ける

特殊車両通行認定を受けると、車両制限令上は本来通行できない車両でも通行することができます。


認定期間は通常最大2年となり、期間満了後は毎回更新申請を行う必要があります。


2)極小指定道路への変更を交渉をする

道路管理者に極小指定道路への変更を交渉することができます。


ただし各管理者において極小指定道路に変更した経験は多くないことが想定され、積極的に対応してもらえるかどうかは疑問です。


当事務所が管理者である市役所に交渉した際は、市役所の方に情報収集をしていただき、さらに当事務所でも交通量調査を行なったものの変更していただくことはできませんでした。


交通量が多いからではなく他の管理者含め、経験・資料が乏しくかつ将来的な土地開発の可能性も0ではないことが理由でした。


3)道路を拡張する

こちらは当事務所の実例で、特殊なケースかと思います。


車庫前の幅員を当事務所が測定した際は6.5mほどありましたが、管理者より幅員証明を取得すると4.0mでした。


そのため上記2)の交渉を行ったのですが受け入れてもらえず、結果として道路を拡張(整備)することとなりました。


もちろん勝手に行って良いものではなく、然るべき手続きを経ています。


車庫周辺は田んぼが多い地域で車庫の前面道路は砂利で簡単に舗装されている程度でした。


確かに道路幅自体は6.5mあっても、砂利が敷いてある部分の幅が4.0mだったのです。


そこで十分な幅員を確保できるように砂利を増やして土が見えている部分を覆い、最終的に車両制限令に抵触しないだけの十分な幅員証明を得ることができました。


コンクリートで舗装されているとこちらの手段は難しく、たまたま取ることができた手段かと思います。



4.おわりに

 本記事では「貨物自動車運送事業許可における前面道路幅」について解説しました。


車庫用土地を購入してから前面道路幅が足りないと判明すると、取り返しのつかないことにもなりかねません。


そのため車庫として購入もしくは賃貸借契約を結ぶ前に、車幅、前面道路幅の確認も行うようにしましょう


幅員が6m必要と考えていらっしゃるお客様もいらっしゃいますが必須ではありません。


先述のように案件によって取りうる手段も変わってきます。


ぜひ一度、当事務所にご相談ください。


また、他の記事では一般貨物自動車運送事業の許可要件について詳しく解説しています。


そちらもご参照いただけますと幸いです。


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