500万円以上の工事を受注したり公共工事に参入したりする場合に必要となるのが建設業許可です。こちらの記事では岩手県の手引き・手続きをベースに、岩手県盛岡市の建設業許可に詳しい行政書士が解説をします。

建設業に携わる方は中小企業等に勤務したのち個人事業として独立し、事業規模拡大にともない建設業許可取得や法人成りを検討されることが多いかと思います。
こちらの記事は事業規模拡大にともない建設業許可を検討し始めた方向けに作成しています。
⚫️目次⚫︎
1.はじめに
建設業許可の基準として、下記の6つの要件が定められています。
1)常勤役員等の体制が一定の条件を満たし適切な経営能力を有していること
2)適切な社会保険に加入していること
3)各営業所に技術者を専任で配置していること
4)請負契約に関し不正または不誠実な行為をするおそれが明らかでないこと
5)請負契約を履行するために十分な財産的基礎または金銭的信用があること
6)過去に一定の法令や規定に違反した者でないこと
このうち2・4・6については手引き上での確認が簡単なため、こちらでは解説が必要と想定される1・3・5について取り上げます。
2.建設業に係る経営業務の管理を適正に行うに足りる能力を有すること
建設業は工事請負金額が多額で工期も長期間に及ぶ場合があり、さらには施工・引き渡し後も長期的に責任を負います。
施行中や引き渡し後すぐに倒産してしまってはその責任を果たせないため、依頼主が安心して契約できるように安定的な経営が求められます。
そのような背景があるため、建設業許可取得に際しては経営者に一定の要件が定められています。
その要件が下記イとロのいずれかです。
イ 常勤役員等のうち1人が、取得しようとする建設業に関し次のいずれかに該当する者であること
(ⅰ)5年以上経営業務の管理責任者としての経験がある者
(ⅱ)5年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務を管理した経験がある者
(ⅲ)6年以上経営業務の管理責任者に準ずる地位にある者として経営業務の管理責任者を補佐する業務に従事した経験がある者
ロ 常勤役員等のうち1人が下記(ⅰ)か(ⅱ)に該当し、常勤役員を補佐する者が(ⅲ)か(Ⅳ)か(Ⅴ)に該当する者
◼︎常勤役員等
(ⅰ)しゅとくしよう建設業に関し2年以上役員等としての経験があり、かつ5年以上役員等または役員等に次ぐ職制上の地位にある者としての経験を有する者
簡単な図式に表すと、
「建設業の役員等経験2年 + 建設業の役員等または役員等に次ぐ職制上の地位経験5年」
となります。
肩書きではなく地位が重要であるため、仮に役員ではなく営業部長であっても、役員等に次ぐ職制上の地位にあったのであれば、経営管理者として認められる余地があります。
(ⅱ)5年以上役員等としての経験を有し、かつ建設業に関し2年以上役員等としての経験を有する者
こちらも簡単な図式に表すと、
「他業種での役員等経験5年 + 建設業の役員等経験2年」
となります。
◼︎常勤役員を補佐する者
(ⅲ)5年以上の財務管理業務経験のある者
(Ⅳ)5年以上の労務管理業務経験のある者
(Ⅴ)5年以上の業務運営業務経験のある者
一般的に本項目は「経営業務管理責任者」と呼ばれ、「経管」と略されます。
経営業務は法人個人を問わないため、個人事業主として事業を開始した後に法人化した場合でもその経歴を通算することができます。
3.各営業所に技術者を専任で配置していること
各営業所に許可を受けたい建設業に関して一定の経験を有する技術者を専任で配置する必要があり、これは一般的に「専任技術者」と呼ばれます。
専任技術者は営業所運営の統括責任者として、適切な営業所運営・請負契約の適切な契約や履行の確保に向けた技術指導を行います。
そのため専任技術者となれる人の要件が細かく定められており、下記がその要件となります。
イ)取得したい建設業許可業種に応じた国家資格を有する者
ロ)取得したい建設業許可業種に応じた学歴と一定期間以上の実務経験を有する者
ハ)取得したい建設業許可に関する10年以上の実務経験を有する者
上記の通りイ→ロ→ハの順で検討していくと、申請に際し負担が少ないです。
「実務経験」とは建設工事の施工に関する技術上のすべての経験を指しますが、雑務や事務は該当しません。
また専任である以上、他の営業所との兼任は認められません。
各要件は業種によって細かく定められており、こちらに記載するとページが長くなりわかりづらくなるため別途詳細ページを作成しています。
そちらもご参照ください。
4.請負契約を履行するに足る財産的基礎又は金銭的信用を有していること
許可申請に際し「お金」の要件も定められており、次のいずれかに該当する必要があります。
イ)自己資本の額が500万円以上であること
ロ)500万円以上の資金調達能力を有すること
→こちらは金融機関から発行される預金残高証明書または融資証明書等で示す必要があります(岩手県の場合)
ハ)許可申請前の過去5年間許可を受け継続して営業した実績を有すること
上記のうち「ハ」は業種追加の場合のため、全くの新規申請の場合は「イ」または「ロ」にて検討をします。
自己資本に関し法人の場合は「純資産」のため分かりやすいですが、個人事業主の場合は少々計算が必要です。
個人事業主の場合は「期首資本金 + 事業主貸 + 事業主利益 ー 事業主借」という計算になります。
言葉で書くと分かりにくいため図にすると下記の赤枠部分になります。

電子帳簿をつけていると分かりやすいですね。
法人は資本金が500万円以上あっても繰越利益剰余金がマイナスの場合、純資産が500万円を下回っている場合もありますのでよく確認しましょう。
また「ロ」に関し、疏明資料は預金残高証明書または融資証明書等となります。
融資残高証明書(現在の融資残高を表す書類)ではありません。
すでに融資を受けているものの運転資金や設備資金として使用し、預金に500万円ない場合もありえます。
その場合は所轄庁やお近くの行政書士にご相談ください。
5.おわりに
ここまで大まかにですが一般建設業許可要件について確認してきました。
建設業許可の難しいところは人的要件である、経営管理者と専任技術者の要件を満たせているかどうかかと思います。
ご自身での判断が不安だったり判断がつかない場合は、行政書士や管轄窓口に確認しましょう。
【岩手・盛岡で建設業許可と言えば“行政書士いのうえ法務事務所”!】
行政書士いのうえ法務事務所
井上 知紀
〒020-0033 岩手県盛岡市盛岡駅前北通6-36